当社では、イルミナ社NovaSeq 6000 とMGI Tech社 (DNBSEQ-T7, DNBSEQ-G400: 旧名MGISEQ-2000) 、2種類の大型シーケンサーをユーザー様の研究シーンに合わせご利用頂いております。
両者ともに、シーケンシング方法は、SBS法 (Sequencing By Synthesis) をシーケンス原理としておりますが、この2つの機種は、シーケンシングの鋳型の作り方が大きく異なっていることはあまりご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。
イルミナ社はDNA断片をフローセル上でブリッジPCRにて、増幅を行い鋳型となるクラスターが形成されます。一方、MGI社では、クラスターに相当するDNAナノボール (DNB) を調製した後で、DNBをフローセルにロードします。この違いによって、前者ではPCR工程があるため、あるクラスター形成過程で塩基エラーが一度入るとそのエラーが増えてしまい間違った塩基をコールする可能性がある一方で、後者では、1本鎖の環状DNA (ssCircDNA) からローリングサイクル増幅 (RCA) を行っており、この反応過程では、必ずオリジナルssCircDNAからのみ増幅される仕組みのため、あるDNB内で同じ位置の塩基エラーが増えていく心配は少ない特長があります。
ただ残念なことに、DNBは凍結保存できず、シーケンス直前にDNB合成を用時調製する必要があり、準備に手間がかかるデメリットがあります。イルミナ社は、断片化されたライブラリーDNAを凍結しておいて、すぐシーケンサーにかけられるため、使いやすいです。
得られるFastqデータは、イルミナ社であってもMGI社であっても、同等なデータが取得できることが示されており*、研究予算によっては、指定が有る場合がありますので、事前にご相談頂ければと思います。
*Korostin D et. al., 2020, Plos ONE 15, e0230301